「人が一人亡くなった」ことを証明しなくてはならない

人が生きている、死んでいる、というのは一体どういう状態だと思いますか?

普段はかけらも意識しないと思いますが、死亡事故が起きたとき、ご遺族は初めて人の生き死にの客観性がどれだけ大切かを知ることになるのです。

世の中には、「本人にしかできない手続き」がたくさんありますよね。

代理人を立てるという方法はあるものの、銀行のATMでお金を下ろして良いのは名義人本人だけですし、良く行くお店のポイントカードをつくるときは本人の身分証明書が必要になります。

例えば一家の大黒柱が死亡事故にあったら、残された家族は故人の銀行口座から生活費を引き出さなくてはならないかもしれません。マイホームの名義を変更しなければ、家は所有者不在の資産になってしまいます。

死亡生命保険金の請求も、「保険に入っていた人が亡くなったことを証明する」必要がありますよね。でないと、不正受給もやりたい放題になってしまうからです。

そんなわけで、事故後に必要な多くの手続きのなかでも、とくに重要なのが「死亡届」の提出です。

客観的にその人の死亡を証明するためには、

①医師に死亡したことを証明してもらう
②医師の証明書を使って役所に届けを出し、戸籍の情報を更新する

という2段階の手続きを行う必要があります。

死亡届の提出をちゃんとしないと後々面倒なことになってしまいますから、手続きについて抑えておきましょう。

①医師に死亡したことを証明してもらう

交通事故が発生したら、救急車と警察を呼びますよね。

死亡事故、つまり被害者もしくは加害者が亡くなってしまった場合、状況によってさらに2通りの対応にわかれます。

警察や救急車が来た時点で亡くなっている場合

遺体は病院ではなく、警察署に運びこまれます。

事故で亡くなった人の死亡理由や住所氏名などを警察に頼まれた医師が検案し、「死体検案書」という書類を書きます。

書類は、警察医から交付されます。

事故直後は息があり、搬送中や入院後に亡くなった場合

この場合、運び込まれた病院の医師が死亡確認を行うことになります。

「死亡診断書」という書類を書いてくれるので、病院で必要な枚数を発行してもらいます。

死亡診断書と死体検案書の違いとは?

じつは死亡診断書と死体検案書は同じ書類を使っています。

死体検案書の場合は歯科医では作れないなどの違いはありますが、内容に差はありません。

なお、死因に事件性がみられる場合は検案ではなく司法解剖が行われます。

②医師の証明書を使って役所に届けを出し、戸籍の情報を更新する

死亡診断書や死体検案書をもらったら、故人が亡くなった場所の役所か本籍地、現住所にある役所に「死亡届」を提出しに行きます。死亡届の書類に必要事項を書き込み、きちんと判を押してから提出です。

死亡届を出すことで、役所が管理している戸籍の情報が更新され、その人が公的に亡くなったことになります。

提出するのは役所の市民課ですが、婚姻届などと同じく24時間提出できるので、時間を気にする必要はありません。

ただ、「故人の死亡を知ってから7日以内に死亡届を提出」しないと、5万円以下の罰金刑に処されますので注意しましょう。

でないと、「年金をもらっている人が亡くなったのに届けを出さず、他の人が故人の年金を不正受給する」なんて事件が起こるからです。

「火葬許可証」か「埋葬許可証」をもらおう

医師から故人の死亡を証明してもらい、役所に死亡届を出して公的に死亡したという状態になったら、今度は葬儀のための書類が必要です。

日本での一般的な葬儀の方法は、火葬か土葬かになりますね。

どちらも勝手に行って良いことではなく、遺体を火葬(土葬)します、という証明書がないと火葬場も焼却してはならないのです。

「火葬許可証」や「埋葬許可証」といった書類は、役所に行って死亡届を提出したとき、代わりに渡されます。

ちなみに、火葬後に墓地や霊園に埋葬をするときに「埋葬許可証をもってきてください」といわれることがありますが、これは「火葬場に提出した火葬許可証に、火葬しましたよという証印をもらって手元に戻ってきたもの」のことです。

特別に土葬をするなら「埋葬許可証」が必要ですが、多くの場合受け取るのは「火葬許可証」だけで構いません。

生命保険の受給や名義人の変更、各種手続きには「死亡届」が絶対に必要

人が一人亡くなるというのは、とても大変なことです。

死亡届の提出をしていないと、保険や年金を停止したり、世帯主を変えたり、生命保険の請求をすることもできません。

事故はある日突然起こります。

家族を失って悲しむ間もなくたくさんの手続きをしなくてはならないため、いざという状況になってから調べても、うまく理解するのは難しいのが実情です。

故人を弔ってあげるためにも、死亡届だけは忘れないようにしましょう。